TOP ― 木造・免震基礎 ― 第5章 考察 5.1 ベースプレート底面の摩擦について

第5章 考察 5.1 ベースプレート底面の摩擦について
実験パターン3で衝突の瞬間(0.3秒間)における“鉄骨加速度(水平)ch2”、“鉄骨変位ch4”、“木造加速度(水平)ch7”に注目した。実験パターン3の代表として、実験番号H28-0419 (パターン3、重錘高さ35mm、摩擦のみ)での観測波形を図23に示す。

5.1.1 静止摩擦係数

図23に示す区間(ア)では、緩衝材のゴムシート(約3cm厚)で台車は減速されてゆき、点(イ)で台車は跳ね返り、台車、鉄骨ともに加速度が最大になる。しかし、この区間(ア)では鉄骨変位(ch4)は生じていないが、鉄骨加速度(ch2)は生じていることから、ベースプレートと帯鉄との間の静摩擦が発生している。そして、鉄骨加速度が400galに達したあたりから、鉄骨に変位(ch4)が生じ始める。このときの鉄骨加速度(約400gal)が静止最大摩擦力によるものと考えられる。よって、静止最大摩擦係数はこの鉄骨静止最大摩擦力による加速度を重力加速度(980gal)で除したものなので約0.4といえる。この静止摩擦係数は本実験全てで同様であった。
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5.1.2 動摩擦係数

図23において鉄骨基礎が滑り始めた区間(ウ)について考える。区間(ウ)では、鉄骨加速度(ch2)と木造加速度(ch7)がほぼ逆位相であり、振動の中心からの振幅の絶対値もほぼ等しい。この振動の周期は、木造フレーム頂部を人力で加振しその後の自由振動から得られた木造フレームの固有周期と一致する。つまり鉄骨が滑り出した後、ある動摩擦係数で力を受けながら、木造フレームをばねとしておもり部分の質点(約600kg)と鉄骨基礎部分の質点(約500kg)とが、振動しているためと考えられる。この振動の弾性エネルギーは鉄骨が静止摩擦力を受けた状態で、木造フレーム上のおもりが慣性力により蓄積したものと考えられる。ここで、下に示す図24のような振動モデルを考えると、おもりの加速度と鉄骨の加速度とを合成した重心位置での加速度がベースプレートで受けている動摩擦力による加速度と等しくなることから、動摩擦係数μ’は下の(2)式で与えられる。この式(2)が適用されるのは、鉄骨基礎が滑り出した直後からである。図23中の長い破線で示した合成波はこの木造フレームの振動を考慮したものである。このように計測された鉄骨の加速度は木造フレームによる振動が加わることで、計測された加速度は実際に摩擦力から発生している加速度よりも大きな値が生じている。本実験では衝撃吸収性能を評価する際、この振動の影響を差し引いた抵抗力を考えることとする。
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